萌鉄'99 パート2
 「名鉄、1DAYフリーきっぷで支線の旅」

名鉄キハ30


 名古屋を中心に君臨する大手私鉄の名古屋鉄道、通称名鉄(めいてつ)。名古屋とその周辺都市を結ぶ大幹線をいくつも持ち、名古屋圏の輸送量はJRをもしのぐという日本でも有数の大手私鉄である。

 名鉄といえば、パノラマカーをはじめとするとするハデな特急列車が高速に駆け抜ける近代的なイメージが先行しがちだが、実は先の方まで行くと大赤字のローカル線も抱えているという一面もある。幹線の収入でローカル線を養っているという、旧国鉄のミニチュア版のような形状になっているのだ。

 そして時は1月。正月参拝用に「1DAYフリーきっぷ」という名鉄全線1日乗り放題の切符が発売されている。それでいて2100円というお買い得さ。これは支線の先っぽまで堪能してくるしかないでしょう!


 まずは新名古屋駅から新岐阜行きの特急に乗る。やって来たのはすっかり名鉄の顔として定着した感のあるパノラマスーパー。名鉄の特急は、北アルプス号以外は特急券不要で乗れる点が良い(指定席には指定券が必要だが)。

 ここは特に書くこともなく新岐阜へ到着。名鉄の新岐阜駅とJRの岐阜駅は500m程度離れており、名鉄の岐阜市内線で1区間。

 新岐阜からその市内線に乗る。


新岐阜駅前電停に停車中のモ780形 岐阜市内線(ぎふしないせん)。岐阜市内を走る路面電車のこと。岐阜駅前から忠節(ちゅうせつ)までの路線を基本としてはいるが、田神線(たがみせん)と美濃町線の徹明町(てつめいちょう)〜日野橋(ひのばし)間も料金上は市内線と同等でどれだけ乗っても均一170円。だが、今回はフリーきっぷなんで気にする必要はない。

 

 新岐阜駅前の電停から黒野行きに乗り、これまでの特急とは一転して路面電車のゆったりした旅にかわる。

 

 ・・・が、すぐ2つめの徹明町で降りてしまう。ここでは美濃町線に乗り換える。

 


徹明町に停車中の美濃町線モ590形 美濃町線(みのまちせん)。徹明町と美濃を結ぶ長大な路面電車線だが、専用軌道区間もかなり持っている。競輪場前で田神線と接続し、田神線経由で乗り入れてくる新岐阜発の列車とくっついて走る「続行運転」は美濃町線の見所のひとつ。

徹明町交差点を通過する市内線モ570形 市内線の徹明町と美濃町線の徹明町は交差点を挟んだ対面にあり、乗り換えるには道路を渡らなければならない。美濃町線の市内線の直通運転は行っていない(線路は繋がっている)。

 また、美濃町線の電停の前には徹明町駅の駅舎があるが、商店街のアーケードの一角になじんでいる点がおもしろい。

 徹明町駅で待っていると、美濃町線の古豪モ590形がやってきた。昼間は新関〜美濃間を行ったり来たりしているモ590形だが、朝と夜には徹明町までやってくるのである。

 モ590形の走りは豪快だ。路面電車なので床が低く振動がダイレクトに伝わるし、線路もなんというか、それほど線形も良くない。また、車体が軽いからか、人がたくさん乗っていないと安定しないらしく、閑散時には横揺れバンザイで、吊革が網棚にパチンパチンと当たって独特のハーモニーを奏でる(をぃ)。

 で、電車は快調にトばしながら(といっても最高時速は40キロ)、新関へ到着。いつもならここで美濃行きに乗り換えるところだが、この電車は1日に数本しかない貴重な美濃直通。そのまま美濃まで行こう。

 美濃駅へ着くと辺りは雪景色だった。岐阜市内は全く雪はなかったのに、さすがにここまで来ると違う。美濃駅は美濃町線最大の駅で、ホームは2面で車両の留置線もある。昼間はモ590形が1両休んでいるだけだが、夜にはたくさんの車両が並ぶらしい。

美濃駅 さて、名鉄はここまでである。普通ならこのまま引き返すしかないが、それでは面白くない。名鉄の美濃駅から300mほどのところに長良川鉄道の美濃市駅がある。では、ここからは長良川鉄道に乗ってみようではないか。

長良川鉄道には雪がよく似合う 長良川鉄道(ながらがわてつどう)。旧国鉄越美南線(えつみなんせん)を第3セクター化した鉄道。しかし、現在でも線名は越美南線のままである。本来は、越前と美濃を結ぶ予定で、それぞれ両端から越美北線、越美南線として建設したが、結局両線が繋がることはなかった。

 

 美濃市駅から長良川鉄道の気動車に乗って、そのまま美濃太田まで行く。ここでJR太多線に乗り換えて可児まで行く。そうすれば可児で再び名鉄に乗り換えられる。


 JR太多線で可児に到着。我らが貴公子キハ11形に別れを告げ、JRの可児駅に隣接している名鉄の新可児駅へ行く。

JR可児駅と腕木式信号機 JR可児駅の前には、昔なつかしの腕木式信号機が保存されている。腕木式信号機はここ近年はますます減ってきており、現在は全国でもほんのわずかの路線で使用されているにすぎない。しかもまだ減少傾向にある。可児駅のこの信号機は昭和61年に引退。

 名鉄の新可児駅は広見線の中間駅だが頭端式ホームで、直通列車はスイッチバックするようになっている変わり種。

 広見線(ひろみせん)。犬山と御嵩(みたけ)を結ぶ路線。可児駅からは御嵩方面に乗る。ここらは支線とはいえ名古屋本線への直通列車が何本も走り、全くローカルな雰囲気はない。名古屋のベッドタウンなので、通勤通学の乗客も多い。車両も当然、本線と共用だ。

 しかし、途中、明智で降りる。ここは八百津線との乗換駅。

 


明智駅に停車中のキハ30 八百津線(やおつせん)。明智と八百津を結ぶ非電化路線。とはいえ、以前は電化されており、架柱もまだ立っている。あまりにも需要が少ないため、ついに電化を取り消されてしまったのだ。昔は電車が駆け抜けたが、今では気動車が1両でのんびり走っている。

八百津駅 八百津線は終点の八百津以外は全て無人駅。車両は名鉄の新型気動車キハ30形。八百津線はこの気動車1両がピストン運転しているだけだが、車庫が新可児にある関係で、1日1往復だけ新可児直通が走る。

 もともと電車が走った路線で、気動車とはいえ車両は新しいのですこぶる快適だ。たった1両ではあるが、乗客はそこそこいる。周辺もそんなに田舎ってわけでもない。

 さて、そうこうしているうちに終点の八百津に到着。行き止まりなので引き返すしかない・・・、で、引き返す・・・・とはいかず(笑)、車止めの先を歩いてみよう。

 


 八百津線は八百津駅で線路が途切れているが、その先はどう見ても廃線跡のような道が続いている。これはこの先にある丸山ダム建設時に、資材の運搬に使った専用線の跡らしい。幸い道路として整備されているので、そのへんまで歩いてみよう。

どう見ても廃線跡 ゆるやかなカーブ 単線トンネル

 このように、どう見ても廃線跡だろうという道が続く。1枚目は八百津駅を出てすぐの跨線橋。

 2枚目は緩やかなカーブを描く道。

 3枚目は蘇水峡付近の木曽川を渡る橋と単線トンネル。

 

 

 

 


 まあ、八百津駅に戻る。ちなみに、トンネルまでは徒歩で1時間かかるので歩こうって人は覚悟して下さい(苦笑)。

満員御礼の八百津線 八百津駅から再びキハ30に乗り込むが、ちょうど土曜日の下校時間に重なったため、車内は超満員。これなら2両で運転してもいいんぢゃないかと思うが、これだけ込むのは1日わずかの列車にすぎないだろう。それに、別に積み残しが出るほどってこともない。

 ここからはそのまま八百津線を戻り、明智でこんどこそ広見線の終点の御嵩へ向かう。

 

 

 

 


御嵩駅 御嵩駅に停車中の常滑行き6000系乗ってすぐに終点の御嵩に到着。ここはかなり町中、商店も連なり、下町の駅といった感じだが、八百津線よりすいていた。

 車両は本線も駆け抜ける6000系。というか、本線と直通運転しているだけなのだが。

 この辺りは特に書くこともないまま、折り返しの列車で広見線を戻る。途中、新可児でスイッチバックし、そのまま犬山へ。犬山で本線対策に2両増結して、またスイッチバックしてこんどは犬山線で名古屋へ向かう。なんとも慌ただしいこっちゃ。

 でも私は犬山で降りて反対方向へ1区間進み、犬山遊園に降り立った。ここは日本モンキーパークへ向かうモノレール線との接続駅だ。


成田山から見たモノレール モノレール線(ものれーるせん)。犬山遊園と動物園を結ぶその名のとおりモノレール線。途中駅は成田山ただ1つのみ。成田山へ向かう参拝客と、動物園(日本モンキーパーク)へ向かう客が主に利用する路線で、動物園駅からは直接モンキーパークへ入れる。・・・が、外へ出ることもできるので、地元の人で利用している人もいるらしい。

 とりあえず、モンキーパークに入るつもりはないので動物駅駅へ行ってそのまま折り返す。そして、ついでだから成田山でお参りもして(というか、1DAYフリーきっぷに成田山の護摩木箸に引き替えられる半券がついていたからなのだが)、そのまま犬山遊園へ戻った。

 ここからはもう、特に書くこともない。このまま犬山線で帰ってもいいのだが、併用橋の犬山橋を渡るために各務原線経由で帰る。

 各務原線(かかみがはらせん)。ちなみに、JR高山本線に各務ヶ原(かがみがはら)という駅があるが、地名は名鉄と同じ。新鵜沼と新岐阜を結ぶ路線で、名古屋方面からは「犬山まわり新岐阜行き」と呼ばれる直通列車が走り、全線平行しているJR高山本線に大きく水をあけている。


 で、新岐阜、で、新名古屋、で、米野。名鉄1DAYフリーきっぷの旅は幕を閉じた。

 それにしてもこのきっぷはすばらしい。JRの青春18きっぷと肩を並べられるのではないか?名鉄はあまりにも巨大な私鉄のため、まる1日かけても全線を走破することは不可能(まる2日でもかなり厳しい)。しかし、世の中にはもっとすばらしいきっぷがあったのだ。それは次回にありがたく使わせてもらう。そう、骨の随までね・・・。

 萌鉄'99パート3へ続く。


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