萌鉄2001 パート2
 「懐かしき情景 中国の鉄道 重慶〜成都」

ホームの様子

2001年7月実施


 今回の萌鉄は中国から・・・、萌鉄もワールドワイドになったものだ。

 中国の鉄道は陸の王者である。まだまだ自動車の普及がイマイチな中国では、鉄道は地上交通の最高峰に君臨している。かつて日本もそうであったが、急激なモータリーゼーションによって鉄道は衰退していった。中国も同じだが、まだまだ王者であることには違いない。日本人にとっては懐かしい、でも、ここには現実として存在している「本物の王者」を体験すべく、果敢にも躍り込んだ。


 中国の鉄道は基本的に長距離列車である。長距離といっても日本のそれとはスケールが違い、半数以上の列車がなんらかの区間で夜行列車になっており、3日間走り続けるような列車も珍しくない。さすがは大陸!列車も十数両連結しているものが普通で、寝台車もあれば食堂車もある。すばらしい。
 列車本数はそんなだから少なく、1日1本しか来ないような路線もあるのだが、それでも需要があるのは王者たる貫禄か。


 今回は名古屋から飛行機で重慶(チョンチン)へ降り立った。目的地は四川省の成都(チョンドゥ)。距離にして500km。この区間、直通列車は5本。そのうち2本が夜行で所要時間は約11時間。いきなりヘビィに来ましたねぇ。
 500kmといえば、東京〜京都間に相当する距離。新幹線なら最速2時間強の距離だが、東海道線を乗り継げば8〜9時間。相手は機関車牽引の客車で、各駅の停車時間が10分ほどあることを考慮すれば妥当な所要時間といえる。


重慶火車站の駅舎
 重慶駅。中国語では「火車站」(ホウチェヂャン)という。中国の列車は機関車牽引のものが主流のため、日本風にいえば「汽車」だが、中国語で「汽車」というと自動車のことになる。日本語の「汽車」にあたる中国語は「火車」。
 中国の駅は大きい駅も小さい駅も入口と出口が別になっており、イメージとしては日本の駅よりも空港に近い感じ。X線による手荷物検査まである。
 重慶火車站は2階が入口、1階が出口になっている。まさしく空港タイプ。


重慶駅構内

 重慶駅は行き止まりの路線の終着駅になっていて、構内にはいくつもの側線があり、たくさんの客車が留置されていた。そこには入れ替えでけなげに働くディーゼル機関車がいて、到着した車両や出発する車両の出し入れに行ったり来たりしていた。こんな光景も日本ではあまり見られなくなってしまったなぁ・・・。

重慶駅へ入選する列車
 列車が重慶駅に到着。機関車が牽引している客車だが、路線は電化されており電気機関車。枕木はPCでなかなか近代的。

ディーゼル機関車

 しばらくすると側線からディーゼル機関車が現れた。本線は電化されているが、側線は電化されていない。枕木も木のままだ。

ポイントが切り替わる
 ポイントが切り替わり、別の側線へと入っていく。スイッチバックの連続だ!

客車を連れてくる
 しばらくすると客車を連れてきた。

客車を押すディーゼル機関車
 再びポイントが切り替わり、今度はホームへと客車を押し入れる。この後、ホームの機回し線に待機している電気機関車にバトンタッチして営業列車となる。


 時間も来たのでそろそろ乗り込む。

ホーム 電気機関車
 ホームは頭端式。機関車の機回し線とそれに対応したポイントがあるのが客車全盛の姿を物語っている。16両編成の先頭にはシングルアームパンタの電気機関車がいた。こいつはかなり近代的だと思う。

サボ
 客車には行き先サボが。真ん中のマークは中国の鉄道のシンボルマークのようだ。乗った列車は重慶(チョンチン)発7:41の攀枝花(パンジーフア)行き快速列車K924次。
 直通列車は基本的に快速運転で、列車番号に快速を表す「K」がついていないものも主要駅にしか止まらない。小さな駅には区間列車が一日1〜2本しか止まらないようだ。


寝台車
 車内。今回は長距離のため、昼間しか利用しないが寝台車にした。この列車は我々を成都で降ろした後、そのまま夜行列車になるため寝台車が連結されている。昼間から寝台車を利用している人はあまりいないだろうと思ったがなんの、結構利用している人がいる。やはり長距離のため、寝ていけるのはすばらしいことだ。


乗車券 換票証 換票証の裏
 一番左が乗車券。500kmの距離を寝台で乗って92元(約1400円)。安い!乗った席は「硬座特快臥」。硬い座席の快速寝台車という意味らしい。一番安い「硬座」だと36元になるが、165系のような座席だった。こいつに11時間は厳しい。その上が「軟座」でやわらかいシート。一番上は「新型空調車」といって冷房完備の個室寝台車。こいつだと200元。同じ距離乗るにも車両によって5倍もの料金差が生まれる。今回乗ったのは硬いベッドの3段式寝台車。
 車両に乗り込むと乗車券が回収されて、「換票証」というものをくれる。これに書かれている座席が正式なもので、その場の状況に応じて臨機応変に座席を決めてくれる。それは客室乗務員という車掌とは別に各車両に配置されている人が行う。各車両ごとに専用の乗務員がいるとは古き佳き時代。車両の出入口は当然手動で、駅に着くと乗務員が手で開け閉めする。また、それ以外に拳銃を持った警備員も巡回しており物々しさを語る。ちなみに、乗車券は降りる時に返してくれる。


 列車は走り出す。客車特有の揺れを楽しみつつ、比較的のんびりと走る。

永川駅 永川駅ホームの風景
 途中駅の風景。普通車の前にはすごい数の人が待っている。車内は超満員。だが、寝台車へ乗ってくる人は皆無に近い。やはり寝台車にして正解だった。
 ホームには大きな荷物を抱えた人、行商っぽい人、声を張り上げて商売に勤しむ駅弁売り(?)といい、活気に満ちあふれている。停車時間はどの駅も10分程度ある。その間にホームに降りて買い物も出来るし、窓から買ってもいい。日本の鉄道が失ってしまったものがここにはあった。
謎の駅弁(?)
 ものは試し、弁当を買ってみる。ご飯と、鶏肉を煮込んだ謎の物体だった。味は悪くないが、こんだけの量を食うにはくどすぎ。2割程度食ったところで丁重にうち捨てた。
便所くみ取り。
 ふと、ホームとは反対側を覗くと、肥溜めのようなところへ便所から汲み取っている風景が見られた。とりあえず、便所は垂れ流しではないらしい・・・。


専用線 人海戦術
 途中の風景。鉄道が地上交通の王者ということは、貨物輸送も盛ん。旅客列車は少ないが、貨物列車が多いため、停車駅ではたいてい列車の行き違いを行うし、通過駅で貨物列車が待避していることも多い。そして、写真のように工場への引き込み線と思われる線路がいたるところで分岐している。
 また、途中で枕木を木からPCへ張り替えている区間を通ったが、その作業員の多さは閉口間違いなし。うまいこと写真に撮れなかったけど、延々1kmに渡って人人人・・・、きっと、列車が走り去ったら線路をはがして、次の列車が来るまでに張り替えるに違いない。てことは、試運転無し?おぃおぃ。


内江駅 内江駅ホームの風景
 今回の行程の中間地点の駅、内江(ネイジャン)へ着く。ここは宜賓(イーピン)方面からの路線が接続する駅。相変わらず普通車は満員、寝台車は誰もいない。


無人駅?
 途中、列車行き違いのために運転停車(停車はするけど客扱いしないこと)した駅。見るところによると駅舎も無い無人駅。駅の入口も獣道風で萌えそうだが、ちゃんと列車の進行を見守る駅員がホームにいた。このへんの中間駅は1日に上下合わせて2本ぐらいしか停車しないはずだが無人駅にはなっていない。全くもって合理化が進んでいないが、する必要もないのかもしれない。


資中駅 出口
 停車駅の資中(ジジョン)。左の写真は立派な駅舎が写っているが、これは乗車するときに使うだけで、降車時は右の写真のような出口から出る。


どこまでもかわらない川 のどかな風景
 よくあるように、この路線もほぼ川沿いに走る。日本だと、序々に山奥に行くにつれ川は細くなり、流れも急になってくるのだが、3時間走っても4時間走っても、いや、10時間走っても川に変化がない。いつまでたっても同じなのだ。よく考えれば、海は遙か彼方。上流も遙か彼方。そう、その路線に並行するのはその名も高き長江である。途中で長江とは分かれるが、その支流沿いをずっと走る。
 沿線は写真のように農村風景が続き、人々が生活しているのがわかるが、日本の風景と違うのは道路がほとんどないこと。家もあって田畑もある。でも、道路が無い。車が走っていない。町中はともかく、農村地帯では車はほとんど普及していないらしい。


資YANG駅 反対ホーム
 停車駅の資陽(ジーヤン。2面3線で片面ホーム側に停車。だが、線路を挟んだ反対側のホームにも売り子がおり、線路&窓ごしに品物を売っていた。この根性は侮りが足し・・・ってあんた、列車が来るでしょ!
通過する貨物列車
 しばらくすると貨物列車が、汽笛鳴らしまくり猛スピードで通過していった。


駅名、よめません 小さな駅
 途中、行き違いのために運転停車した駅での風景。ホームにはなぞの貨車が止まっていて、我々の列車はホームに面していない線路で待避。すると・・・。
物乞い? 通過列車
 沿線の家から男の子が出てきて、線路を歩く。窓から何かが飛んできて、それを拾っているようだ。乗客から食べ物とかを恵んで貰っているようだ・・・うーむ。
 しばらくすると、対向の旅客列車が通過。我々の列車も発車。


簡YANG
 途中駅の簡陽(ジェンヤン)。代わり映えのしない風景にのへへんとしていたら、今回はあきらめていた「アイツ」が目に入った!蒸気機関車だだだだだ!!
蒸気機関車の煙突が少しだけ 蒸気機関車は鉄柱の後ろに・・・
 しかし、カメラを構えたときはすでに遅し。死角へ入ってしまった。
 左の写真は貨車のバックにわずかに見える蒸気機関車の煙突。右の写真は鉄柱の後ろに隠れて写真写り最悪の蒸気機関車(真ん中の鉄柱の後ろ・・・右方面が先頭で、鉄柱のすぐ左が運転席、その後ろに石炭車が見える)。
 中国の蒸気機関車は路線によっては未だ現役。日本のように保存運転ではなく、現役バリバリなのだ!しかし、今回の路線は全線電化している近代路線。蒸気機関車が走っているという情報もなかったので油断していたが、まだいたとは・・・。でも、あまり動いているような形跡はなく、もしかしたらお役ご免で留置されていただけかもしれない。もしくは入れ換え用か・・・。


成都南
 そしていよいよ11時間が経過。長かった旅も終わり、目的地の成都南(チョンドゥナン)駅へ到着。成都のメインの駅は当然、成都駅だが、この列車は成都駅は通らず、昆明方面へ行く路線の途中にある成都南に停車する。
 列車はこのまま、攀枝花までまだ15時間も走り続ける。11時間乗ってもまだ半分乗ってないことになる。お疲れさん。


 中国の列車は、旅をするためのものである。日本のように通勤で使うとか、そんな気軽に乗れるものではない。本数は少ないし、どの列車も長距離を走る。乗るのに気合いが必要である。例えば、成都から北京までは30時間かかる。でも、みんな列車で行くのだ。飛行機に乗るのは一部の金持ちだけで、普通の人は列車で行くのが当たり前と思っている。
 駅では列車を待つ人でごった返している。大きな荷物を持ち、みんな旅人だ。スーツを着たサラリーマンなんていない。日本の鉄道もかつてはそうだったのだろう。もう見られない光景をタイムマシンで見ることが出来たようで得した感じ・・・。今度は別の路線にチャレンジだ!


 萌鉄2001パート3へ続く。


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